【SS】魔女、懐妊する?【前編】 R18



「赤き雲!!!!!!これはどういう事か説明しなさい!!!!!!」
「………は?」

今日も今日とて地に転がっている瓦礫に向かって延々と無について語らっている雲の背後から、まさしく水牛のように鼻息を荒くした改魔女が何だかよくわからないがいきなり首根っこを掴んできた。

「何をする暇人魔女」
「どっちがですか!!!!そんな事よりこれ!!!!これはどういう事なのですっ??!!!!!」

改魔女の勢いがインパクト十分過ぎて気付かなかったが、改魔女の腕には何やら“小さな生き物”が抱えられている。
しかもそれは雲からすれば毎日のように見ている“彼女”にそっくりだった。

「………」
「貴女、ついにミシアを孕ませましたね?」
「聞いておらん」
「ミシアの事ですからただ単に言わなかっただけでしょう?!!!!!というか貴女っ!!!!妊娠中のミシアに毎晩毎晩そのいかがわしい巨根をぶちこんでいたのですかっ?!!!!何て卑猥な雲なんでしょうっ!!!!!!」
「妊娠中なら腹がでかくなっておるだろうがっ!!!!!いくらなんでも気づくわアホタレっ!!!!!」
「ならこれはどう説明する気ですかっ!!!!こんなにミシアそっくりの小魔女ちゃんが生まれちゃってっ!!!!ハァハァ!!!!」
「このシスコン地味魔女めが。鼻血を拭け鼻血を」

妹にそっくりな小さき魔女を改めて視界に収めた改魔女がそのあまりに似すぎた容姿に思わず鼻血を噴射すると、雲は毎度毎度迷惑な姉だなと眉を寄せながら律義にティッシュなど差し出した。

「あらどうもありがとう。………さぁ赤き雲!!!!白状なさいっ!!!!孕ませたのか孕ませてないのかっ!!!!いいえ確実に孕ませたのでしょうけどっ!!!!」
「わしは知らんっ!!!!ちゃんと“大丈夫ではない日”は口に出すだけで我慢しとるわっ!!!!」
「威張るな変態雲めっ!!!!可愛くて清らかだった私の妹を返しなさいっ!!!!」
「ほざけっ!!!!可愛いのは認めるが清らかという点は否定するっ!!!!とんだ淫魔だあの魔女はっ!!!!」

激しく言い合う二人の間で、ほったらかしの小魔女が何やら小さく溜め息をつく。
そして改魔女の腕からスルリと抜け出し雲の方へと歩み寄れば、いきなり雲の顎目掛けて強烈な頭突きを披露した。

「ガフッ??!!!!!!!」
「誰が淫魔ですか失礼な」
「っ…な、何をするこのガキ魔女っ!!!!」
「貴女もアルも、とんだ盲目生物ですね。私がミシアです。わかりませんか?」

そう言う小魔女に驚いて、雲も改魔女も正面から小魔女をジッッッッ!!!!!と凝視する。
言われてみれば、その小さい割に生意気な物言いといいキッと吊り上がった目尻といい鋭角“へ”の字になった口元といい、魔女要素満載であるが。

「………本当に…ミシアなの?」
「そうですよアル」

ジロジロと見つめてくる改魔女に対してコックリ頷き返事を返せば、今度は雲が体をペタペタ触ってくる。

「いつからこのような幼児体型に成り下がったのか」
「と言いながらちゃっかり胸と下半身の確認をするのはやめなさい」

しっかり“使えるか使えないか”の確認を施す雲に対しては凄まじく氷点下な物言いで、顔面パンチのオマケを付けながらツッコんでやる小魔女。
ここまでくればもはや魔女である事は疑いようがない。

「しかしミシア、何故そんな犯罪的に可愛らしい姿に?」
「犯罪的かどうかわかりませんが、朝起きたらこうなっていました」
「雲と一緒にいたのではなかったのですか?」
「小さ過ぎて目に入らなかったようですね」
「赤き雲、ちょっとツラを貸しなさい」

手をバキボキ言わせながら引きつった笑顔で呼び掛けてくる改魔女に目を逸らし、雲はちゃっかり小魔女を抱き上げてフワリと宙へ浮き上がる。

「まぁとりあえず過ぎてしまった事をどうたらこうたら言っても仕方があるまい。とにかくこやつが魔女だと言うのなら、当然わしが面倒をみなくてはいかんだろう。案ずるな地味魔女。ちゃんと食事の世話から風呂の世話、果てはベッドでの多様な世話までしっかりしてやるから」
「最後の世話は必要ありませんっ!!!!大体そんな小さな体のミシアに貴女の巨根をねじ込んだら、可愛いミシアの肢体が裂けるチーズの如くバラバラになってしまいますっ!!!!」
「なりません」

何だかもう精神的に踏んだり蹴ったりな小魔女が短く改魔女の言葉を否定すると、それを良いことに雲はサッサと闇の中へと逃げ込んで小魔女を見事に連れ去った。

 

 

 

 

 

 

 

「ほれ、ついたぞ」
「………何ですかここは」

ピンク。
視界がピンク。
というよりピンクで埋め尽くされているこの部屋は何なのか。

「ホテルだが?」
「何故ホテルに来たのですか」
「決まっているだろう。こういう場所でする事と言えばただ一つ」
「相も変わらず貴女の頭の中身はそんな事だらけですか」
「気にするな。ほれ魔女。小さくなったとて中身は変わらんのだからサッサと始めるぞ」
「……………」

相変わらず人の意見を聞かずにサッサと体の装飾品を投げ捨てていく雲に、小魔女は溜め息をついた後何やら頭に浮かんだ“妙案”に一人口元を緩めた。

 

 

 

後編に続く。