混沌のサダメ



全てを無に還しても
全ての時を操っても

わしは
私は

 

 

 

お前を無に還す事を躊躇う
貴女を操る事など出来ない

 

 

 

 

 

 

「後はお前だけだ…魔女」
「そうですね、雲」

戦いの果て、敵を殲滅し同胞さえ葬った。
何も無くなろうとしているこの世界に今立っているのは、混沌であっても僅かな人間らしさを見出だした最愛の相手。

「わしに消される覚悟は出来たか?」
「貴女こそ。私に時の彼方へと消し去られる覚悟は出来ましたか?」

“出来た”と言ってもいい。
相手に消される覚悟なら、とうに出来ている。

ただ出来ていないのは

 

 

 

 

 

お前を無に還す覚悟
貴女を時の彼方へ消し去る覚悟

 

 

 

 

「時は残酷だな。こんな時こそ、わしの時間を早めて欲しいというのに」
「それは無とて同じ事。こんな思考など巡らぬうちに、早く私を還してくれればいいものを」
「………わしには出来ん。お前を無に還すなど」
「………私にだって出来ません。貴女を消し去る事なんて」

 

 

伸ばした手が互いの指を絡めて合わさる。
相手を葬る事が出来ないのなら。
いっそこのまま抱き合って。

 

 

「真の闇を」
「遊びは終わり」

 

 

 

自分の体を貫こう。

 

 

 

 

 

 

混沌であるわしとお前
混沌である私と貴女

これが相応しき終わりであると
これが相応しき始まりであると

 

 

 

二人無へと溶け合いながら
思うことが出来るだろうか……