【SS】魔女と赤雲、痴話喧嘩をする【犬も食わない】 09/02/26



爽やかな風が吹き抜ける次元城の天辺。
青い空に白い雲、眩しいばかりの日差しが目にしみるこの場所で、とある女二人が凄まじい形相で睨み合っていた。

「雲。私の枕を使いましたね?」
「使ったが?」
「無断使用の挙げ句にヨダレを溢してシミまでつけましたね?」
「つけたが?」
「更にはそれを隠そうと修正液を塗りたくりましたね?」
「塗りたくったが?」
「馬鹿ですか貴女」
「馬鹿と言うなっ!!!!」

事の発端は赤雲が魔女の枕を勝手に使って昼寝をした事。いつもベッドに寝かせてもらえない赤雲は床で寒々と寝ていたが、ついにフカフカのベッドの誘惑に勝てずに魔女の留守中そこで昼寝を試みた。
何とも寝心地のいいベッドと愛しき魔女の香りのする枕に、赤雲はあっという間に深い眠りに落ちてしまう。そして目が覚めた時一番に垣間見たのが、枕に出来た大きな大きなヨダレの痕。
それを今魔女に問い詰められ、あたかも自分は悪くない的な言い方をしたものだから余計怒りを煽る結果になっているという事態である。

「そういう事があるから、貴女をベッドに上げたくなかったのです」
「だからといって何も床で寝かせる事はないだろうっ!!」
「ちゃんと御座を敷いてあげているでしょう」
「御座云々の問題かっ?!!わしはお前の伴侶だぞっ!!!!」
「いつ誰が何処でそのような世迷い言を吐いたか知りませんが、貴女は断じて私の伴侶などではありません。願い下げもいいところです」
「何をっ?!!!!日々お前の暴言に堪えてきたわしだが、もう我慢ならんっ!!!!亭主の力を見せてやるわっ!!!!」
「はっ、お戯れを。私に手を上げるおつもりですか?」
「家庭内暴力と言われようがもはやわしの知ったことではないっ!!今こそわしの存在の有り難み、思い知らせてくれるわっ!!!!」
「はいはいグレートアトラクター」
「ぐはっっっ!!!!!!!」

勢いだけが先走った赤雲は、見事に魔女の“重き痛み”を真っ正面から貰い受けひゅるるる…と次元城の狭間へと落ちていく。
それを眺めながら魔女は一つ溜め息をつき、仕方がないので今度枕を買い与えてやろうと思い直すのだった。

但し布団を買う予定はないが。