ひみつの特訓
「オーダー、シー・ローズ。タイプH2O、トランス」
こっそりと、自分の部屋で呟く。蒼羅の声に合わせて、空気中の水分が急速に集まって一つの形を取り始める。間もなく蒼羅の下腹部に天へ向かってそそり立つバイブが形を取った。
「やっぱり一人だとちゃんとできるのに」
唇を尖らせて自分の姿を姿見に映す。前から横から角度を変えて眺めてみるが、大きさも収束具合もあの夜よりずっと良い。
「そりゃあトロットロに溶けちゃうよ、ママの前じゃあね」
頬を膨らませたまま悪戯気分で先端に触れる。ぷるんとした独特の感触が指先を押し返してくる。そのまま緩く握りこむと、手の温もりがバイブと接続された局部の神経細胞に伝わり、子宮の奥から切なくなるような甘い感覚が背筋を這い上った。触れるのを待つように乳首がつんと立ち上がり、吐息とともに震える。
「ママ…」
蒼羅が目を閉じて思い出すのは、あの夜の乱れた雨蘭の姿だ。熱く濡れた雨蘭の肉壁の柔らかさを思い出して、蒼羅の奥底の疼きがひどくなる。握った手をゆるゆると動かしながら、蒼羅は鏡に硬く立ち上がった乳首を押し付けた。金属の冷ややかさが火照った肌を刺激する。乳首への愛撫を求めて、蒼羅は鏡の前でバイブを握ったまま身をくねらせた。白い柔らかな尻が淫靡なラインを虚空に描く。
『溶かして…蒼羅』
雨蘭の喘ぎの混じる甘い声が耳の奥で再生される。滴る愛液が白い太ももを伝って流れ落ちる。一人遊びのもどかしさに身をよじりながらも、バイブを弄ぶ手の動きは次第に速さを増し、鏡にはバイブから跳ね飛んだ水滴が次々に筋を作った。
「ママぁ…っはぁ、あっ、ママっあ、あ、っあああっ」
蒼羅が絶頂に達した瞬間、バイブの先端から液体が噴射され、鏡の中の蒼羅を汚した。
荒い息を整えながら、蒼羅は雨蘭とのセックスの時の絶頂までの所要時間と今の一人遊びに要した時間を比べてみた。明らかに前回の方が早い。早すぎる。こんなに早く絶頂に到達してしまって、ちゃんと雨蘭は満足できたのかという思いが蒼羅の心を重くした。何かにつけて蒼羅に優しくしてくれる雨蘭のことだ、もしかしたら蒼羅のプライドを傷つけないように振舞ってくれたのかもしれない。そこまで考えて、自分が情けなくなってしまった蒼羅はベッドへと倒れこんだ。
「ママがエロエロなのが悪いんだ。中だってきゅうきゅう締め付けてきて…こっちはエロいママを見てるだけでイきそうなのに」
クッションを抱きかかえてふて腐れるも、思い出すのはあの夜の事ばかり。汗ばんだ肌に張り付く蜜色の髪や、絡めとった舌の弾力が生々しくよみがえってくる。
「はあ、ママ…エロかったなあ…」
一度鎮めたはずのムラムラが再び沸き上がり、乳首に指を絡ませて弄ぶ。
「もっと大人になりたいよ…」
小さく呟いて、態勢を変えようと寝返りを打ったところで枕元に放り投げたままの一冊の雑誌が蒼羅の目に留まった。
「…?…膣トレ?」
しばらく後。雑誌の記事に書かれた内容とずいぶんと違う気はするが、蒼羅は努力というものをしてみることにした。
「オーダー、シーローズ」
再び小さく呟くと、今度は水の塊が足の間へと入り込み、蒼羅の奥をたっぷりと満たす。わずかな間水の温度が冷たいと感じたものの、すぐに体温と同化してしまう。下腹部が膨れるほどの大きさではないが、少々重さを感じる。ふつう膣トレというのは締りを良くするためのトレーニングだが、蒼羅は別の発想をした。
経験値が少ないのならば特訓あるのみ。…カヒリエの影響があるのかもしれない。
「うん、あとは少しずつ慣らして…」
鏡で身体の様子を確認し、満足げに頷いたところで思わぬ呼び声が部屋の外から掛かった。
「蒼羅、蒼羅いる?」
「えっ、あっ、ママ?」
「ちょっと手伝ってもらえないかしら」
「ま、待って、今行くから」
慌てて脱ぎ散らかした服を身にまとう。動いてみるとやはり微妙な違和感がある。何の手伝いかは知らないがこの状態で出ても大丈夫か蒼羅は扉の前で一瞬躊躇した。それでも雨蘭の呼び声には抗えず、扉を開けた先には――。
-つづく-
作:ツヅラカヅサ殿 ひみつの特訓
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小説は、ユリ母iN同人誌2巻に再録しています。
【表紙】
*小説「ひみつの特訓」は2016年春発行のユリ母iN同人誌版2巻にも収録します。
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